アンコンシャスバイアスに気づく3つの方法

 続いて「アンコンシャスバイアスによって、組織やチームでどのような問題が起こるか?」という点について、掘り下げられていく。「マネジャーのアンコンシャスバイアスが強いと、部下の成長や活躍に影響する可能性が高い」という研究結果の紹介の後、中原教授は「明確な意図や悪意を持っている人はほとんどいないはず。落とし穴は、『グレーな領域』に潜んでいます」と解説した。「グレーな領域」は、これまで私が受講してきたアンコンシャスバイアスの研修でもたびたび使われてきた言葉だ。明確な意図や悪意といった“ブラック”ではなく、むしろ、「よかれ」と思っての言動や判断が裏目に出るというものだ。事例を見ながら、中原教授が「どこが気になりますか?」と西村さんに質問する。二人の対話はとてもわかりやすく、チャットにも多くの声が並んでいく。中原教授はそのひとつひとつに対して丁寧にコメントを返し、「よかれと思って、部下の業務負荷を減らすことを、私は『配慮アサイン』と呼んでいるのですが、思い込みで決めつける前に、本人はどうしたいのかをいったん聞いてみるのがいいのではないでしょうか」と、視聴者にアドバイスを送った。

 アンコンシャスバイアスに気づくことは、組織やチームにとって、もちろんメリットがある――とはいえ、無意識だからこそ自覚できないのがアンコンシャスバイアスだ。では、どうやって気づけばいいのだろう? 中原教授が、その3つの方法を教えてくれた。

 1つは、潜在的連合テスト(IAT)で自分のアンコンシャスバイアスを「見える化」することだ。このテストは、簡単な分類課題を通して、頭の中にあるイメージの結びつきを測定するもので、これまでに約3万人が受けているという。測定結果によると、ジェンダーに関するバイアスがあると判定された人は約6割。性別による差はほとんどなく、若い世代でも過半数がバイアスを持っているという結果が私には予想外だった。また、年齢に関するバイアスや国籍に関するネガティブなバイアスは、若い世代に顕著という結果にも驚いた。「シニア世代のほうがバイアスの強いイメージ」が私にはあったが、それすらもバイアスだったということか。

 テストを受けた西村さんが、「自分にはバイアスはないと思っていたのですが、予想以上のバイアスがあることがわかりました」と告白すると、中原教授も「(バイアスは)私も持っているし、誰もが持っている。だからこそ、うまくつきあっていく方法を考えるのです」と答えた。中原教授自身は、プレゼンなどの資料で、男性のビジネスパーソンのイラストを使いがちな傾向があるようで、そうならないための確認を怠らないようにしているという。視聴者のチャットに、「(わたしの方法は)発言の前に一呼吸おくこと」というコメントがあった。発言するときや何かを決定するときは、気持ちに余裕を持って、“いま一度確認すること”が大切なのだろう。