職場で自分の経験談を話すのも方法のひとつ
アンコンシャスバイアスに気づく2つ目の方法は、「日常に潜むバイアスを発見する」ことだ。
セミナー視聴者は、「ステレオ地雷発見ワーク」という事例動画を見ながら、「ステレオ地雷」と思われるシーンの数をチャットに投稿していった。その数はさまざまで、同じ動画を見ても「何をバイアスと思うかは人それぞれ」ということが明らかになった。事例動画の中には、年齢や世代でくくる発言もあり、「いま、私が教えている大学生たちは『Z世代』と言われていますが、ひとつにくくれないほど、学生はそれぞれ違います。(属性を)ひとくくりにする言葉は危険です」と、中原教授が発した。具体的な事例やエピソードが、セミナー視聴者の腹落ち感を増していく。
そして、アンコンシャスバイアスに気づく3つ目の方法として、「お互いの経験談を共有し合う」ことが紹介された。多くの人がアンコンシャスバイアスを持っている――つまり、それは、バイアスで判断してしまった経験、逆にされてしまった経験があるということ。セミナー視聴者たちが、自分のエピソードをチャットにどんどん投稿していく。
このようにして、アンコンシャスバイアスに気づく方法を学ぶことができたが……では、気づいた後はどうすればよいのか?
中原教授は、再び、「アンコンシャスバイアスはゼロにはできない」と強調し、だからこそ「うまくつきあっていくほかない」と語った。対処法は、繰り返してしまうことを前提に、対策を立てること――自分が、いつ、どのようなシチュエーションで、バイアスのかかった言動や判断をしてしまうのかを知ったうえで、あらかじめ、対策を決めておくこと。その方法を知って、私も自分自身を振り返ってみた。私の場合、人と話すときに間があくと、「何でもいいから話さなくては……」と焦り、つい、バイアスのかかった発言をしてしまうことがある。これからは、一呼吸置いてから話すように意識していこうと、自分なりの対策を立てることができた。
オンラインセミナーの終了後、私は西村さんに、中原先生の基調講演を通じて、どのような気づきがあったかを聞いた。
「中原先生自身もバイアスを持っているという点が印象に残りました。バイアスをゼロにはできないからこそ、自覚し、うまくつきあっていくことが重要だと感じました」(西村さん)
さらに、「こまめに立ち止まり、自分のバイアスを振り返り、仕事の成長につなげていきたいです」と、今後の抱負を語ってくれた。
SESSION1の基調講演にアットホームな雰囲気が終始保たれていたのは、素直なコメントを発する西村さんと、それを柔らかく受けとめ、わかりやすく示唆する中原教授とのやりとりに拠るところが大きい。セミナー視聴者からも、「こんなホンワカするセミナーは初めてでした」といった感想が寄せられていた。チャットの投稿が活発に行われ、視聴者間の学びや気づきが共有されていたことも、私にはとても印象的だった。








