4年連続赤字→世界シェアトップの軌跡
近年のソニーの業績拡大を牽引したのは直近3代の経営トップ、平井一夫氏、吉田憲一郎氏、十時裕樹CEOの手腕によるところが大きいだろう。
企業が持続的な成長を実現できるか否か、それが経営者の責任といっても過言ではない。2012年まで振り返ると、ソニーは4年連続で最終赤字だった。ソニーは一体どうやって経営危機から抜け出したのか。
経営戦略の理論に「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」というものがある。成長性と市場シェアを縦軸と横軸の基準にして、製品や事業を評価するものだ。成長性が低くシェアも低い事業からは撤退し、成長性とシェアが高い事業に経営資源を再配分することで、企業は長期存続を目指す。
12年当時のソニーには、競争力を発揮できそうな分野があった。CMOSイメージセンサーをはじめとする画像センサーだ。スマホのカメラや、自動車の自動運転技術などで需要が高まっていた。
そこでソニーは、パソコン、化学品事業、旧本社の土地建物などの売却、人員削減といったリストラを大胆に進めた。そうして資金を捻出し、イメージセンサー事業にヒト・モノ・カネを集中させ、シェアを拡大していった。シェアが拡大すれば、顧客との価格交渉力が高まる。財務面では、フリーキャッシュフローの創出力が向上する。このような施策の結果、ソニーは世界の画像センサー市場で50%超のシェアを誇るまでになった。
こうして得た資金を、ソニーは次に映画、ゲーム、音楽などコンテンツ事業に再配分している。米クランチロール(アニメ配信企業)を21年に買収し、海外コンテンツ事業も加速させた。
また、世界トップシェアの画像処理センサーの製造技術を上げることで、より鮮明な映像体験を世界の消費者に供給した。『鬼滅の刃』を鑑賞した人は、画像の美しさや没入感に対する高評価コメントをしている。







