「早稲田」からの推薦枠は拡大の方向で

日本最古の私立医科大が「早稲田」にだけ学校推薦枠を設けた3つの理由30倍を超える競争を乗り越えて2025年の入学式に臨む125人 写真提供:日本医科大学

――現在、学校推薦で入った学生は4年生までいるわけですね。

弦間 推薦で入った学生は成績上位者30人にほぼ入ります。4年生のうち2人は成績上位ベスト10で、各学年でも2~3人ずつ入っています。学力だけでなく、社会活動や研究を頑張る学生もいます。学校案内に載っている早稲田出身の4年生は、研究室でAIを活用した病理のシステムを自分で組み立てています。

 たまにスポーツをやりすぎた人もいますが(笑)、4年生には軟式テニス部とハンドボール部の主将もいて、両方とも結構強い。中高で部活も頑張ったのでしょう。隣にそうした存在を見ることで、他の学生に良い影響が及んでいます。

――他の学生への良い影響が三つ目の理由でしょうか。高校側も、推薦する以上しっかり人物を見ているわけですね。今後の学校推薦についてはどのように考えていますか。

弦間 早稲田からの学校推薦は本当にうまくいっていると感じています。来年4月からというわけではありませんが、各校1人ずつ推薦枠を増やそうと話しているところです。

――合計9人ですか。獨協医科大学は2つの付属校(獨協、獨協埼玉)から10人の内部進学枠を設けていますが、それに匹敵する人数です。中学受験では最難関の早慶の系属・付属校からは7割が文系に進学していますが、これはもったいないなといつも思っていますので、こうした進路はありがたい。一般選抜はいかがでしょう。

日本最古の私立医科大が「早稲田」にだけ学校推薦枠を設けた3つの理由[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

弦間 医学部は倍率が高く、実力があっても受かるとは言えないところがあります。平均すると、本学の受験生は国公立と私立の上位校を含む7~8校を受けて、合格した中から進学先を選ぶことになります。

――それで119人の募集人員に対して、志望者数4087人(34.3倍)、受験者数3753人(31.5倍)というものすごい倍率になるわけですね(志望者数と受験者数には学校推薦の6人を含まない)。

弦間 本学の2次合格発表は前期が2月16日、後期が3月9日です。3月上旬に国公立の前期合格者が発表されると、学費の安い旧7帝国大学(北海道・東北・東京・名古屋・京都・大阪・九州)や東京科学大学(旧・東京医科歯科)など国公立の合格者が合格を辞退してきます。

――筑駒(筑波大学附属駒場)や桜蔭などからの合格者の一定数は国立大学に流れていくわけですね。

弦間 一方で毎年、地方の国公立大学を辞退して、30人ほどが本学に入ってくれます。

――結果として、25年の合格者数の合計が218人(推薦の6人を含む)まで増えていったと。

弦間 できれば東京科学大学と千葉大学などには後期試験をやめてほしい(笑)。25年は東京科学大学(募集人員10人)が3月23日に、千葉大学(同15人)が3月20日にそれぞれ合格発表しました。それを受けて本学も3月27~28日に繰り上げ合格を出す必要が生まれます。他の私立も玉突きで追加合格を出していくことになり、最後は1人の生徒の奪い合いとなります。

――わずかな人数とはいえ、大変ですね。

弦間 入学者数が1人違ってもいけない学科なので、入学定員(推薦6人を含む125人)ぴったりにしないといけません。4月上旬に新入生が間に合わない大学も出てきます。