多様な学生を選抜するための工夫

日本最古の私立医科大が「早稲田」にだけ学校推薦枠を設けた3つの理由2年生から卒業時までの学びの場となる済生学舎(千駄木キャンパス) 写真提供:日本医科大学

――日本医科大学の2025年の高校別合格者数を見てみると、開成19人、桜蔭16人、海城12人、豊島岡女子学園9人、渋谷教育学園幕張と聖光学院が各8人、広尾学園と駒場東邦が各6人、筑波大学附属と筑駒と雙葉が各5人、浦和明の星女子と麻布と浅野が各4人となっています。国立と私立の中高一貫校で占められていますね。

弦間 合格者のほとんどを中高一貫の進学校が占めている極端な例として挙げられるのが東京大学の理IIIだと思います。昔は全国から各県の1番、2番の人が入って来ていました。いまはもう、筑駒か灘か桜蔭かという状況です。

――複数合格者がいる公立高校は、東京都立日比谷の3人、都立国立と千葉県立千葉と静岡県立浜松北の各2人しか見当たりません。多様性の確保という意味で、他に入試での工夫はありませんか。

弦間 一般選抜でも2年前から「グローバル特別選抜」(募集人員10人)を設けました。国際的に活躍できるよう、出願時に英検なら準1級以上を保持するなど一定以上の英語力を要件として、大学入学共通テストでの国語の受験も必須としています。学校推薦枠と同様、教養のある生徒を採るための工夫です。

――私立医科大は英数理3科目が中心ですから、事実上、国公立大を受ける人が対象となりますか。

弦間 グローバル特別選抜の合格者は、全員が2年分の授業料500万円を免除されます。国公立上位大学を辞退して本学に来てくれる例も出ました。

――2018年に570万円引き下げて6年間の学費合計が2200万円ですから、500万円は大きいですね。貸与期間の1.5倍の期間をその自治体が指定する地域で勤務するという条件の地域枠を見ると、東京都の貸与額2200万円+毎月の生活費10万円は別格として、新潟県の同2160万円もほぼ全学費をカバーできますね(他に千葉・埼玉・静岡の各県が同1440万円)。

弦間 はい。その他、細やかな工夫はいろいろとしています。本学の一般選抜は1000点満点で、理科が400点、英語と数学が300点ずつとなっています。中でも数学はトップクラスの難しさですが、ほぼ満点だった難関中高一貫男子校出身の受験生がいました。ところが、英語の得点が50点ほどで、これをどうするか議論となりました。各科目の合格最低点があるわけでもないのですが、入学後、英語でだいぶ苦労したようです。やはり医師はバランスが大切かとも思います。もっとも、その学生がこれから先、研究で伸びる可能性もあるから何とも言えません。考えてみれば中学入試では英語は出ませんしね(笑)。

日本最古の私立医科大が「早稲田」にだけ学校推薦枠を設けた3つの理由多様な学生を確保するためには入学者選抜での工夫が欠かせない