今冬は「供給力が大きく減少」
電力需給は「予断を許さない状況」
仮に、次のようなシナリオを想定してみよう。2026年1月中旬、強烈な寒波が首都圏を襲い、気温が低下。需要が急増する中、東京湾岸にある大規模な火力発電所が1基、老朽化によるトラブルで緊急停止する。同時に、中東情勢の悪化でLNGタンカーの到着が1日遅延し、また1基動かせない状況になる。
この複合的な事態が発生すれば、東京エリアの予備率は瞬く間に1%を割り込むだろう。東京電力管内は、もはや「想定外」が一つ起きるだけで、警報圏内に突入するほどに追い詰められているのだ。
このような厳しい状況にもかかわらず、政府は2025年の冬については「事前の節電要請は実施しない」と発表した。その理由は、「最低限必要な予備率3%を確保できる見通し」だからだという。
しかし、この発表を額面通りに受け取るのは極めて危険である。数字の裏側を見れば、その危うさは明らかだ。資源エネルギー庁の資料では続けてこう指摘する。
昨冬(2024年度)の東京エリアの予備率は10%以上を確保できる見通しだった。それが今冬は、最も厳しい1月と2月で4.8%まで半減している。資源エネルギー庁自身が、その理由を「発電機の廃止やトラブル停止等により供給力が大きく減少していること」と認めている。つまり、「節電はお願いしないが、余裕は昨年の半分以下になった」というのが実情なのだ。
「節電要請なし」という言葉は、国民に「電力は足りている」という誤った安心感を与え、社会全体の心理的な緩みを招きかねない。この「油断」こそが、電力危機における最大の敵である。
絶望的な状況を打開する
確実かつ唯一の方法は
気象庁の3カ月予報では、今冬の気温は「平年並みか高め」と予測されている。しかし、これもまた「平均」のわなだ。年間を通した平均気温が上昇していても、数日間だけ記録的な寒波が襲来すれば、電力システムは簡単に崩壊する。電力需給は、年平均ではなく、最も厳しい一瞬の需要ピークに耐えられるかで決まる。
この絶望的な状況を打開する、確実かつ唯一の方法は何か。それは、東京電力が所有する世界最大級の原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の再稼働である。
現在、東京電力は自らが直面する電力危機を解決しうる切り札を持ちながら、それを使えないという自己矛盾に陥っている。柏崎刈羽原発には7基の原子炉があるが、そのうち6号機と7号機は、新規制基準に基づく安全審査に合格済みだ。







