当時、私のタイトルは「主席部員」でしたが、これは海外ではもっと上のポジションに当たります。しかし、主席部員の英語タイトルはManagerだったので、当時の私のタイトルもManagerでした。

 企業買収の交渉で人事チームのリーダーとして、米国の交渉先の人事と会合を開いたときのことです。

 初日は人事のトップであるVice President(VP)が出席しました。しかし、翌日からはVPは欠席し、代わりにManagerが来たのですが、担っている権限が少なく権限委譲もされていなかったので交渉は全く進みませんでした。

 なぜ、VPは欠席したのでしょうか?

 それは私のタイトルがManagerだったからです。「武田がManagerを寄越すなら、こっちもManagerでいいだろう」と職務等級を揃えたわけです。

 このように、日本と海外ではタイトルに対する理解に乖離があります。タイトルについての理解もグローバル水準でなければ、仕事や組織がうまく動かないということを知っておいてほしいと思います。

権限を渡さないのに
責任だけは負わせる

「レポートライン」という言葉は日本ではあまり馴染みがありませんが、海外の企業では非常に重視されます。

 レポートラインは組織の指揮命令系統や役割分担の範囲を指します。では、レポートを受けるというのはどういう意味があるのでしょうか?

「レポートを受ける」「レポートラインを持つ」というのは、「権限と責任を持つ」ということとイコールです。

 参天製薬でのケースを紹介します。

 ヨーロッパ全体を統括していたリージョンヘッドがいたのですが、最終形にはそのヘッドはヨーロッパの事業だけを見ることになり、研究開発、生産、管理部門などはその人の配下ではなくなりました。

 その際、日本の社長が「ヨーロッパ全体のPL(損益計算書)も管理してくれ」と要請しました。すると、ヨーロッパの事業ヘッドは「権限もないのに責任は持てません」と難色を示しました。

 社長の要望は、投資家へのIR(投資判断に必要な情報提供活動)の際に、ヨーロッパ全体の売上などの質問が出るので、経理部門とは別にPLをウォッチしておいてほしいということでした。