日本人は阿吽の呼吸で「ついでに、あれも見ておいてよ」といったアバウトな発想をしがちですが、海外の人は「権限がないのに責任は持てない」と考えます。ですから、この要請はずっと平行線でした。
マネジメントの感覚の違いで、権限があれば責任を持つし、責任を負わせるなら権限を渡さなければなりません。
そして、権限委譲した場合はすべて任せます。マイクロマネジメント(部下への細かすぎる管理、過干渉)をしてはいけません。海外ではそれが普通です。
しかし、日本企業は権限と責任を同時に持たせるということがあまりできていません。
「俺は聞いていない」と
責任逃れに終始する管理職
また、武田薬品時代にはこんなこともありました。
ヨーロッパでのM&A後の統合について、海外営業を統括するドイツ人の取締役をヘッドとするスペシャルチームが、この統合を責任を持って推進することになりました。
経営会議や取締役会にかけるのもそのヘッドが責任を持っていますが、そこには各部門の担当も参加します。
そこである経理部長が「俺は聞いていないぞ」と文句を言い出し、日本の他の本部長も「海外の連中は何をやってるんだ!」と追随しました。
こうした「俺は聞いていない」を解消するには、きちんと責任を負わせて権限を渡す必要があるのです。
「聞いていないというのなら報告しますが、あなたが決めるのであればその決定に対して責任を持ってください」というのがドイツ人ヘッドの言い分です。
経理部長は単に「聞いていない」ことが不満だったわけで、権限と責任を持つという認識は全くありませんでした。
こうした行き違いが、日本企業のグローバル展開でマネジメントがうまくいかない原因の1つになります。
2人の上司に求められるのは
緊密なコミュニケーション
レポートラインについて、日本企業では「自分の配属先がどこか」、つまり「箱(部署)」を基準に考えがちです。
しかし、海外の企業では、組織内の所属先よりも「誰の部下なのか」、つまり「レポートライン」を重要視します。







