損益分岐点とは、損失と利益が分岐する点のことをいいます。言い換えると、「どれくらい売り上げを上げれば利益が出るのか」を示すラインです。

 このラインを下げることができれば、多少売り上げが減っても黒字を維持でき、逆に売り上げが伸びれば利益は大きく跳ね上がります。特に原材料価格の高騰や為替の変動などの外部要因に影響を受けやすい外食産業では、損益分岐点をいかに下げるかが重要です。

 もっとも、「損益分岐点を下げる」努力は、他社も当然のように取り組んでいるテーマです。そのなかで、すかいらーくはなぜ短期間でこの改革を成し遂げることができたのでしょうか。

DXで収益構造が変わる
すかいらーくならではの強みとは?

 その大きな原動力となったのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)。すかいらーくはDXによって、「店舗運営=人海戦術」という外食産業の常識を覆しつつあります。

 すかいらーくは2020年以降、主要ブランドでデジタルメニューやモバイルオーダーを導入し、一部店舗では配膳ロボットの活用も進めてきました。これにより、注文から提供までの流れがデジタル化され、収益構造が根本から変わったのです。

 デジタル化の取り組みは、例えば次のように、財務面の状況を改善します。

・ デジタルメニュー導入により、注文ミスや食材ロスを削減し、原価率を改善

・配膳ロボットの活用で、少ない人員でより多くの顧客をさばける体制を築き、人件費を削減

・モバイルオーダーによって、注文効率化と顧客体験を改善することで客単価や回転率を底上げ

 実際、こうした取り組みが本格化した2022年以降、売上高に対する人件費率は37.3%(2022年)→ 33.1%(2023年)→32.6%(2024年)と低下しています。