風俗店経営者と仲良くなった
「1万5000円事件」
歌舞伎町で性風俗店を経営する木村さんとは、「1万5000円事件」で仲良くなった。例によって、最初は敵同士だったのだけれど。
「うっかり本番行為をやってしまい、相手の女性の彼氏から脅されているんです」
いつものように、そんな依頼者がやってきた。店が脅迫してきたなら話は早いが、キャストの彼氏は素人のようである。そうなると、相手は2人になる。表に出てこないだけで、店の関係者が裏から彼氏を操っているのか。その可能性も捨てきれない。まずは店長と話をするつもりで、私は店舗に電話をかけた。すると店長はすぐに引っ込み、「社長」が出た。それが木村さんだった。
「本番行為があったようで、キャストさんの彼氏という男性に、依頼者が脅迫されています。依頼者の証言によれば、同意の上だったとのことですが……」
私が軽く投げたボールに対する木村さんの反応は興味深いものだった。
「そうですか。法律に反する本番行為で儲けようとするのはやめなさいと、つねづね言い聞かせているんですけどねえ。とはいえ、そちらさまにはそちらさまの言い分がありますでしょうし、私どもの女性にも、彼女なりの言い分があると思いますから、まずは彼女に話を聞きます。その上で、こちらから連絡を差し上げますね」
木村さんはそう言って電話を切ったのだ。性風俗店で本番をめぐる騒動は日常茶飯事なので、弁護士に対して、責任者が世慣れた柔らかい態度をとることは珍しくないが、ここまで丁寧なのは初めてだった。
ひょっとすると、こちらが動くまでもなく、依頼者を脅迫しているキャストの恋人を諭してくれるかもしれない。そうなれば、だいぶ楽だ。仮に同意があったとしても、本番行為が行われたことは事実なので、10万円程度で手打ちにできるだろう。
店側から求められた
解決金の数字に驚愕
翌日、木村さんから電話がきた。
「彼女とも、彼女の恋人とも話しました。今後、依頼者の方に連絡がいくことはないと思います。ルール違反の本番行為があったことは事実のようなので、性病検査代として1万5000円の支払いをお願いできますか」
これには驚いた。







