「本音と建前」でざっくり言うなら、性風俗店の多くでは本番行為が行われている。
定価以上の金銭が欲しいキャストたちが自ら提案している場合もあるし、黙認という名のもとに店がプレッシャーをかけている場合もある。動機や背景は様々だが、実状として、性風俗店と違法な本番行為は切り離せない。
だが、木村さんは心の底から「クリーンな性風俗店」を経営しようとしているのだろう。
性風俗店で働く女性の中には「やりがい」ではなく「金」のためだけに、そこで働いている人も多い。
本番行為を誘発して美人局のように数百万円を脅しとる悪質な店舗やキャストも存在する。そうでなくても、今回のように本番行為があった場合は、実際には同意の上でも、同意などなかったと言い張り、数十万円程度の解決金を要求されることが多い。
相手が払うと言っているのだから受け取る、というのが普通の感覚だろう。中には店のルール違反を理由に、示談金の大半を召し上げるような店まである。
だが、木村さんは「性病検査代の1万5000円だけでいい」と言った。
「煙草の景品買い」で
儲けた木村さんの父
金をわたせなければ、キャストが別の店に移ってしまうかもしれないリスクもあるのに、本番行為で儲けようとするのを防ぐことに本気で取り組んでいる。私は心を動かされ、いつもは郵送する示談書を直接手渡しすることにした。
そして木村さんとの付き合いが始まった。
木村さんは、渋谷の育ちだ。父親は戦後の混乱期に、百軒店の知る人ぞ知る焼鳥屋で修業していたそうだ。
「その焼鳥屋さんの大将は小指が欠けていてね。地元では名の通ったヤクザ屋さんだったんです。だからお客さんにもその関係の人たちが多くて、組の大幹部も常連だったみたい。ただ父も若かったし、遊びたかったんでしょうね。20歳になる前に、焼鳥屋さんの修業をやめちゃって、ヤクザ屋さんのもとで働き始めたそうです。
まあ、いろいろやったみたいですが、煙草の景品買いを仕切ったのが一番儲かったと言っていました。景品買いって面白いシステムなんですよね。パチンコで当てて、お客さんが景品で煙草をもらうじゃないですか。で、店を出たら、その場で、父たちがその煙草を現金で買い取る。その同じ煙草を、景品で出したパチンコ屋がヤクザ屋さんから買い戻すわけです。







