彼女がそんなに簡単に引退するわけがない

 一方、そんな彼女は自分の容姿に大変自信があるらしく、旧暦正月(春節)やさまざまな節句、さらには国慶節(建国記念日)などのお祝いのたびに、華やかに着飾った姿を、自身のフェイスブックアカウントにまるで支持者へのプレゼントと言わんばかりにアップロードする。これもまた「季節の風物詩」として、良くも悪くも市民に話題を提供してきた。

レジーナ・イブ氏がSNSにアップした写真(Facebookより引用)レジーナ・イブ氏がSNSにアップした自分の姿(Facebookより引用) 拡大画像表示

 そんな自信たっぷりの彼女が、ここでそう簡単に引退するなど、支持者のみならず市民の誰もが信じていなかった。

「70歳足切り」圧力が現実だと確信したメディアは、行政会議に向かう彼女を包囲した。珍しく彼女が「会議に行くのよ、邪魔しないで!」と刺々しく答えた表情を、人々は「圧力と自身の気持ちの板挟みになっている」と受け取った。

 それから1週間後、その葉劉議員もとうとう不出馬を宣言。同時に、葉劉議員が率いる政党「親民党」の副主席でやはり元保安局長の黎棟国氏(73歳)も引退を発表し、これで70歳以上の現役議員12人全員が引退することになった。ただ、葉劉氏だけは「選挙出馬を辞めただけ。シンクタンク運営からは引退しない」と強調している。

 葉劉氏を含め不出馬の12人はみな口々に、「70歳足切りルールなぞない」と圧力の存在を否定する。だが、庶民ですら「目に見えない圧力」を感じながら生活している今の香港で、その言葉を信じる人はほぼいない。

 バージョン1で民主派が完全に消し去られ、バージョン2では用済みとなった親中派の重鎮が排除された形だが、もちろん親中派にも中国当局に楯突く力はない。ならば、その意図に従いつつ、お上との良好な関係を築き、自身の今後に役立てる方がずっと平穏で無事に、そしてメンツも保って生きていけるというわけだろう。