「新顔」候補者は、フェンシングの美人金メダリスト

 こうして香港市民にとって少なくとも顔と名前が一致する、見慣れた古株議員が「退場」させられていく一方で、もちろん、新たな顔ぶれも準備されている。

 そのうち最も注目を浴びたのが、2024年パリ五輪で女子フェンシング・エペ金メダリストの江旻ケイ(ビビアン・コン、「ケイ」はりっしんべんに「恵」)元選手である。

江旻ケイ氏の選挙ポスター(Instagramより引用)江旻ケイ氏の選挙ポスター(Instagramより引用)

 同選手は同五輪を機に引退、香港競馬の主催団体「香港ジョッキークラブ」に入職すると、一足飛びに対外事業部のアシスタントマネジャーに就任した。同クラブは競馬の収益をチャリティ機関として公共施設の建設運営を行なっており、政府との関係も密接だ。

 本人が立候補宣言するよりも先に、彼女がジョッキークラブを休職し、直接選挙枠から立候補するという噂が駆け巡った。香港にフェンシングブームを巻き起こした彼女は非常に知名度が高い。擁立者にとっては、申し分のない候補者だった。

 だが、すぐに問題が発覚した。直接選挙枠では「外国居住権を持つ者の立候補を認めない」との条件があり、カナダパスポートを持つ彼女は排除されてしまったのだ。ならば、と目を向けた「効能組」枠のスポーツ・文化界代表でもやはり同じ国籍条件があり、そこからも立候補できないこともわかった。

 江選手擁立は万事休すか……と思われていた矢先、勤め先のジョッキークラブ対外事業部が競馬ツーリズムを推進していることから、なんと「効能組」で旅行業界代表議員として立候補を決めたという。これまでの同業界代表は中国系旅行会社トップが務めてきたが、そこでも何らかの駆け引きが行われたのであろう、立候補を取りやめている。