また菅山はこれらの回答の背景には、敗戦後の産業復興のため労働者の団結が必要だという意識があったことも指摘している。くわえて日立製作所の工職混合組合の一本化は、社員(職員)層が主導したことも指摘している。

 工員・職員の身分制度撤廃の推進については、優遇されていた社員(職員)層のほうが、むしろ工員よりも熱心であったとすらいう(注5)。

 つまり特権的な地位にあったはずのホワイトカラーが、ブルーカラーの権利拡大に熱心であったのだ。

 敗戦という衝撃、復興しなければならないという共通認識、第二次大戦前の人間らしく働きたいという労働者の熱望、そして労働組合活動の高揚──。こうした様々な条件が奇跡的に重なった激動の時代に、同じ労働者としてブルーカラーとホワイトカラーの連帯が実現したのではないだろうか。

非正規雇用者を入れたくない
労働組合役員の本音

 工員組合と職員組合が工職混合組合に一本化され、日本でブルーカラーとホワイトカラーの連帯が実現したのは、組合員自身がそれを熱望したからであった。労働組合がブルーカラーとホワイトカラーの連帯を主導したことは、日本におけるディーセント・ワーク(働きがいのある仕事)の実現に向けて、大きな意義があったといえよう。

 では人口オーナス時代(人口負荷・労働力不足時代)に、労働組合において正社員と非正規雇用者の連帯は実現するのか。

 現段階ではそうした連帯は実現していない。

 全労働組合員数に占めるパートタイム労働者の割合は14.3%(141万人)にすぎない(注6)。労働組合の中核は正社員なのだ。なぜ労働組合は非正規雇用者を包摂できないのだろう。それにはいくつか理由がある。

(注5)同前書 菅山(2011)

(注6)厚生労働省「令和5年労働組合基礎調査の概況」(2025年1月8日アクセス)