経済成長の牽引役はスマホからAIへシフト

 2000年代に入りデジタル化は加速し、世界全体でインターネット通信が普及した。そして、アップルのiPhoneを代表とするスマホの登場で、私たちの生活や常識は一変した。新型iPhoneの発表が米国のGDPを押し上げているといっても過言ではない。

 スマホがもたらす新たな需要は加速度的に増えている。SNSの登場、フィンテックビジネスの成長、ネット通販や継続課金制度(サブスクリプション)による消費は増えた。

 iPhoneのヒットに続けと、韓国サムスン電子は「ギャラクシー」ブランドのスマホを出した。それを追いかけ中国のシャオミやファーウェイ、オッポ、ビボなどもスマホを発売。性能面での差は徐々になくなり、価格競争が激化した。いわゆるコモディティー化である。

 その状況を一変させたのが、AIの登場だ。特に、22年11月末、米オープンAIが生成AIのChatGPTを発表したインパクトは絶大だった。情報の整理やデータ分析などで、AIは「人にとって代わる」ようになった。

 AIチップ分野では、演算能力に優れたエヌビディアの画像処理半導体(GPU)が、インテルの中央演算装置(CPU)にとって代わり、半導体業界に優勝劣敗が付いた。メモリー分野でも、HBM(広帯域メモリ―)の開発に先駆した韓国SKハイニックスが、サムスン電子からDRAM世界トップの座を奪った。

 半導体の国産化が遅れた中国も、23年夏にファーウェイが回路線幅7ナノメートル(ナノは10億分の1)のスマホチップの国産化にこぎつけた。これをきっかけに、中国ではアリババやテンセント、バイドゥ、新興のディープシークなどによるAI開発が加速した。

 世界経済の主役はスマホからAIにシフトした。AIチップの設計開発、製造に関する知的財産分野では、今のところ米国が中国に対する優位性を保っている。一方、AIの推論モデル開発などソフトウエア分野では、中国勢が優位になり始めたとの指摘が増えている。