暮らしが厳しいまま...日本経済は復活できるのか
わが国経済はなぜ停滞気味なのか。まず、世界のハイテク産業は、自社で完結する垂直統合から、国際分業を重視する水平分業にシフトした。半導体やスマホ、電動車分野にも水平分業の波が押し寄せている。
それに加えて、AIの推論モデルなどソフトウエア開発で、米中のIT先端企業に比肩する日本企業が見当たらない。米中対立、中国の景気減速の影響から、日本企業が中国の需要を取り込むことも難しくなってきている。
日本経済は北米向けの自動車輸出や訪日外国人観光客(インバウンド)需要によって、何とか緩やかな持ち直しを維持している。しかし、名目賃金の伸びが物価上昇率に追い付いておらず、人々の暮らしは厳しいままだ。
日本政府と企業が、AIとロボットの結合にどう対応するかは、日本経済の再興に決定的なインパクトを与えるはずだ。決して楽観はできないが、半導体分野でラピダスが発足し、27年に回路線幅2ナノメートルのチップ量産を目指していることはポジティブだ。
今なら挽回するチャンスはある。なぜなら日本は、産業用ロボット分野で数値(NC)制御関連装置の製造技術を磨き、世界トップのシェアである。安全性、耐久性の高い自動車の製造技術は、ヒューマノイドの製造に重要だ。
今年10月、ソフトバンクグループが、スイスの重電大手ABBからロボティクス事業を買収すると発表した。AI分野で米国企業と提携し、最先端ソフトウエアの実用化を目指すデバイスとしてのロボット創出に取り組むことは、日本の産業の成長に欠かせない。
半導体、AI、ロボットは「戦略物資」である。雇用への影響をはじめ日本が、安心・安全なAIロボット国際規格を主導するためには、この分野で世界一を目指す企業が増えるべきだ。
民間のリスクテイクを支援するためには、政府のサポートも必要だろう。そうした取り組みが迅速に進むか否かが、日本経済の成長力向上に決定的なインパクトを与えるだろう。企業経営者も覚悟を決めて、世界的な産業の変化に対応することが求められる。








