急速に成長期待が高まるAI+ロボット分野

 現在、中国や米国では、AIの社会実装を可能にするデバイスとして、ロボットの開発競争が激化している。成長期待はAIから、AIとロボットの結合に移行したと考えられる。

 ロボットは産業用とそれ以外に大別できる。22年、産業用ロボット分野で、わが国企業は約7割のシェアを確保した。ところがその後シェアは低下し、世界のロボット先進国の座から滑り落ちた。

 同年のサービス用(いわゆる汎用型)ロボット市場では、米国が世界トップの35.5%、中国は33.3%のシェアだった。その後、中国勢の成長は加速している。サービスロボット市場は足元、中国が世界トップのシェアを獲得した可能性は高い。

 中国では、AIを搭載し自律的に周囲の環境を認知し、勝手に行動を行うロボット開発が急加速している。今年7月、上海で開催された世界人工知能会議(WAIC)は、中国企業の実力を世界に知らしめた。食事の提供や調理、あるいはボクシングや宙返りをするロボットが会場を席巻したのである。

 その背景には、旺盛な起業スピリッツや、国を挙げた支援の積み増しがある。習近平国家主席が掲げる産業政策「中国製造2025」をきっかけに、中国の中央・地方政府は関連分野の支援を増強している。今年、新たに中国政府が1兆元(約21兆円)規模の産業支援ファンドを設定し、AIとロボット分野の支援を拡充した。

 米国では、オープンAIやグーグル、メタ、テスラなどが汎用型のAI、さらには「超知能AI」の実用化に取り組んでいる。特に、テスラはAI+ロボットを新たな事業領域に定めた。ロボタクシーに加え、「オプティマス」と呼ばれる人型ロボット事業の収益を伸ばし、ロボティクス企業に変貌しようとしている。

 米中の企業がAIとロボットの開発に集中するのは、AIをバーチャルな空間から、リアルな実社会に連れ出すためだ。生産の現場から日常生活まで、人とAI搭載ロボットが協働・共生するようになる。その結果、人間の幸福感を増幅することができるかもしれない。

 そうした高い成長期待から、世界の株式市場ではAIとロボット、AIの演算能力向上に使う量子コンピューティング関連企業の株価が急上昇している。