「ペイガニズムの復興は欧州各地や北米とかにあって、イギリスは特に盛んな国の一つなんです。いろんな分類がありますが、そのなかの一つである魔女や女神についても研究しています」

 ペイガニズムはキリスト教的な価値観に抵抗感を持つ人たちのあいだで支持される。季節ごとの自然の移ろいにスピリチュアルな価値を見出し、自分なりの神を信仰する。

 魔女といえば薬草を使い、折にふれて儀式を行うというイメージがあるが、魔女がペイガニズムと関わる理由がイメージできた。

聖地グラストンベリーが栄えたのは
“PR大作戦”が中世から続くから

 そうすると、ペイガンが多いグラストンベリーはキリスト教と相性が悪いのかといえば、そうではないらしい。グラストンベリーは「イギリスのキリスト教のゆりかご」と言われるほど、キリスト教と関わりが深い町だそうだ。中心部にはグラストンベリー修道院があり、そこでイギリスで初めてのキリスト教会がつくられたという伝説がある。

「それどころかイエス・キリストがグラストンベリーにやって来たという伝説まであるんですよ!」

 青森県にはキリストの墓伝説があるが、あんな感じだろうか。

 キリストがやって来たグラストンベリーはキリスト教徒にとっても聖地だそうだ。グラストンベリーとその中心的存在であるグラストンベリー修道院には様々な伝説が残され、伝説によって町が栄えてきた。

 伝説による町おこし。グラストンベリー修道院の人たちはさながら優秀な地方自治体職員のようなのである。経緯を追ってみよう。

 まず12世紀後半、修道院で大火事が起きる。いろいろ焼失してお金がない!そこでつくり出されたのがアーサー王の棺伝説だ(PR大作戦フェーズ1)。

 中世に流行った騎士道物語で有名なアーサー王という英雄がいる。ケルト系のブリトン人の王になったと言われている人物だ。ブリトン人をひとことで説明するのは難しいが、しいて言うならば、ローマ人がやって来る前からグレート・ブリテン島に暮らしていた人たちである。アーサー王が実在したかどうかは不明だが、グラストンベリー修道院は、このアーサー王の棺が出てきたと言いはじめた。