スピリチュアルと観光が結びついた
グラストンベリーはいまも栄えている

 やがてグラストンベリーに住んでいた女性が女神信仰の運動をはじめる。夏にイベントをするのだが、それがだんだん大きくなっていった。イベントの時期になるとたくさん人がやって来る。かつてはアメリカ人が多かったようだが、いまはスペイン人が増えているそうだ。イベントにやって来た人たちは物を買いまくる。

「グラストンベリーのハイストリートって、半分ぐらいがスピ関連のお店なんです。オカルト系の本屋、ハーブ屋、インド系の服屋に雑貨屋、ヴィーガン・カフェ、あとはその……、もうなくなっちゃったけどカンナビス(大麻)の道具屋とか」

『変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館』書影『変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館』(樫永真佐夫、CEメディアハウス)

 道具屋についてはさすがに苦笑しながらも、河西先生は楽しそうに説明する。先生もそうしたお店めぐりは嫌いではないのかもしれない。研究室の棚には細々とした雑貨がデコレーションされていて、スピリチュアルなグッズと思われるものもあった。先生いわく、その棚は「民博のなかの民博」をイメージしているそうだ。

 グラストンベリーにやって来た人たちは、みんなここぞとばかりに買いまくる。宿泊施設も全部埋まってしまう。このイベントは町の経済に貢献している。経済が回るので、町も歓迎ムードで、町長がイベントに出てきて挨拶したりする。まさに町おこし。

 とりわけ、昔からの住人は歓迎ムードの人が多い。自分が持っている不動産をスピの人がお店として借りてくれるし、民泊を運営したりできるからだ。

「一方で怒っているのが、静かな田舎町だと思ってグラストンベリーに家を買っちゃった人ですね。インドの服は買えるけど、普通の服が買えない!って」