宗教改革に大打撃を与えられても
新しい伝説を作るグラストンベリー

 中世の人たちも、いまの我々と同じようなことを考えて町の経済を回していたのかと思うと親近感が湧いてくる。しかし、その繁栄が翳る出来事が起きた。宗教改革である。

 16世紀前半に権力を握ったイングランド王ヘンリー8世はカトリック教会からイングランド国教会を分離した人として知られるが、そのときに各地の修道院を解散した。解散によって年金をもらって、余生をのんびり暮らした修道院長がいる一方、繁栄しまくっていたグラストンベリー修道院はずいぶんひどくやられてしまった。

「修道院長は絞首刑になったうえ、からだを4つに切り分けられて、その力が復活しないよう別の場所に埋められたそうです」

 平将門かよ……。河西先生も同情的だ。

「グラストンベリーは繁栄を極めていたことと、スピリチュアルかつ歴史的な場所として信仰を集めていたことが仇になったみたいです」

 しかし、こんなことで折れないのがグラストンベリーである。このグラストンベリーの町にはかつてキリストがやって来た、と言いはじめるのである(PR大作戦フェーズ3)。この伝説が語られはじめた頃、アリマタヤのヨセフは錫の交易のためにイングランドに来ていたんだ、なんて話も追加された。伝説はこうして強化されていくものなのか?

 ここまで見てきたように、グラストンベリーはすごい(?)キリスト教伝説がたくさんある町なので、現代になって、そうしたキリスト教伝説に惹かれたヒッピーやスピリチュアルな人たちが集まるようになった。1950年代以降のことである。

「スピな人はキリスト教嫌いが多いなんて言われますが、そうとは限りません。教会組織としてのキリスト教が好きじゃないという人は多いですが、イエス・キリストのことは大好きだったりするんです。だからイエス・キリストが来た場所って聖地じゃない?ってことで、ヒッピーたちが集まってきたという流れです」