例えば、一部の学校では、保護者がその学校の卒業生である場合、学校文化への理解が深いと判断され、有利に働くことがあります。

 いわば“同門意識”のようなもので、学校側としても教育理念を共有しやすい家庭と見なす傾向があるのです。

 学校側が説明する通り、学歴が直接的な評価項目になることはありません。ただ、入学後に顔を合わせてみると、保護者の多くが有名大学や大学院を卒業しているという実態があるのです。

 授業参観や保護者会、学校行事などで交わされる話題にも、幼馴染や学生時代の友人、先生、留学、学生時代のクラブ活動や同窓の有名人などが反映されており、親同士に学生時代の共通の話題が存在します。

 そうした環境の中で、自分の学歴に自信が持てないと感じる親が「せめて願書に書けるだけの学歴を整えたい」と考えるのは、ある意味では自然なことだといえます。

 このようにして始まるのが、いわゆる“学歴ロンダリング”です。

 大学に再入学する人もいれば、より実践的・専門的な学びを求めて大学院に入学する人もいます。

表面的な取り繕いが
やがて「真の努力」へと変わる

 当初は「見た目を整えるため」「願書の印象を良くするため」といった軽い動機から始まることが多いのですが、実際に社会人が大学や大学院に通い、学位を取得するのは簡単なことではありません。

 講義の出席、レポート作成、論文執筆など、いずれも高い学習意欲と時間の確保を求められます。

 平日の夜、仕事を終えてからオンライン講義を受ける。休日にはレポートを書き、締め切りに追われる。そうした努力を子どもの目の前で続けることは、親にとっても相当の覚悟が必要です。

 やがて、この行動は単なる取り繕いではなくなります。

 親自身が「学ぶことの大変さ」と「学ぶことの喜び」を実感し始めるのです。

 そして、その姿を見て育つ子どもにとって、親は何よりの教育モデルになります。