国立環境研究所環境リスク・健康領域の谷口優主任研究員国立環境研究所環境リスク・健康領域の谷口優主任研究員 撮影:今井一詞

前回は全身の不調がわかる「足の特徴」をお伝えした。足を見れば、心不全や腎不全、動脈硬化がわかるという菊池恭太医師(下北沢病院)の言葉に驚いた人も多かったのではないか。今回は「歩き方」に現れる“脳の異変”について取り上げる。国立環境研究所環境リスク・健康領域の谷口優主任研究員が自身の研究を含め、さまざまな報告を紹介してくれた。あなたの歩き方は大丈夫だろうか。(ジャーナリスト 笹井恵里子)

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歩き方には「脳の異変」が現れる
歩くのが遅い人は脳卒中リスクが44%高い

 歩行速度が遅い人は、速い速度の群と比べて脳卒中リスクが44%高い(※1)――国立環境研究所環境リスク・健康領域の谷口優主任研究員がそんな衝撃的な論文を紹介する。

「これは7件の研究データを統合し、約14万人の研究対象者と脳卒中を発症した約2000例から結論を導き出したメタ解析の報告ですが、歩行速度が最も遅い群(中央値1.6km/h)と比較して、最も速い群は(中央値5.6km/h)は、脳卒中リスクが44%低下しています。また歩行速度が1km/h増す=速くなることで脳卒中のリスクが約13%減少するとも報告されています」

 研究報告に掲載されている図を見ても、「歩行スピード」と「脳卒中の発症リスク」に直線的な相関関係があるのがわかる。

グラフ点線は95%信頼区間。真の値が95%の確率で含まれる範囲。赤線は中央値。論文「Walking pace and the risk of stroke: A meta-analysis of prospective cohort studies」の図版を基にダイヤモンド・ライフ編集部作成 拡大画像表示

 脳卒中とは脳が障害を受ける病気のことで、代表的なものに脳の血管に血栓が詰まる「脳梗塞」や、脳血管が破れる「脳出血」がある。

 なぜこのような現象が起きるのだろうか。

「歩き方には脳の異変が現れるのです」と、谷口研究員が続ける。

(※1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33308803/