「今の歩幅にプラス5センチ」が
理想的な歩き方
「歩幅には脳の異変が現れる。逆に言うと意識して歩幅を広くできるなら、それは“脳が正常に機能できている証し”です」
理想的な歩き方として、「今の歩幅にプラス5センチ」を谷口研究員は提案する。
「人にはたくさんの『予測因子』(疾患発生の危険を高める可能性がある要素のこと)があります。例えば男性・女性ということも、ある病気については予測因子になります。『年齢』も若い人に比べて高齢者のほうが病気を発症するリスクが高くなる。多くの予測因子がありますが、年齢や性別、教育年数、遺伝子などは変えられません」
「変えられるものは『生活習慣全般』で、そのなかで『体の動き』はとても影響が大きいのです。体の動きには“その人の今後”を暗示するいろいろなメッセージがある。特に歩き方には脳の異変が現れて、歩幅が狭い人は認知症の発症リスクが高まります。そのメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、わずか5センチでも歩幅を変えることで認知症を予防する一歩になると期待しています」
「広い歩幅で生活すること」を
心がけただけで認知機能が維持・向上
谷口研究員は2022年、NHKの番組協力によって、脳の働きに不安がある60~80代の方を12人集め、認知機能検査を行い、歩き方をアドバイスし、「広い歩幅で生活することを心がける」という緩やかな実験を行った。その1カ月後、なんと12人中8人の認知機能が維持・向上したという結果だったという。
「残る4人の認知機能に目立った変化はなく、大きく悪化した人は1人もいませんでした。歩幅を広くすれば、認知機能を維持・向上できる可能性が高いということです」
「歩くこと」そのものも、脳に刺激を与えている。歩く動作は、歩いた道を覚える「記憶力」、自動車が近づいていないかなど周辺に気を配る「注意力」、自分がどの方向に進んでいるかを把握する「視空間認知」など、複数の機能が必要になるからだ。だが、歩き慣れた道をトボトボ歩くのでは脳への刺激は少ないだろう。いつもより歩幅を広げ、これまで歩いたことのない道を楽しみたい。
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