騒ぎに巻き込まれた人は、モンスター老人がいったい何を求めているのか、どんな結論を望んでいるのかさえ理解できない、というのが正直なところでしょう。
この先、この国ではますます高齢者が増えていきますが、こんなモンスターが右肩上がりで増えていくとしたら、少し重い気分になります。
精神科医の立場からモンスターを観察すると、女性に比べ男性のほうがスキーマ(心の枠組み)にとらわれやすく、「自分の持っているスキーマから、少しでも外れることが許せない」と感じやすい傾向が影響していると考えられます。
加齢が進むと
感情の制御が難しくなる
スキーマどおりに物事が運ばないと不快になるということは、前頭葉の働きが低下して、本来、前頭葉が得意とする予想外の状況への対応ができなくなっている証拠です。「これはこうあるべきだ。自分は絶対に正しい」という考えを押しつけ、それを相手が認めないと気が収まらないのです。そのうえ、前頭葉の機能が低下しているため、怒り出すとブレーキが利かないのです。
人間というものは、認知的成熟度(ひとつのことに対して答えはひとつと決めつけず、いくつの答えを考えられるかという能力)を維持している間は、シルバーモンスター的な感情爆発はあまりしません。たとえば職場を見回しても、30代40代でモンスター化している人はまずいないでしょう。前頭葉がきちんと機能し、理性が適切に働いて、感情のコントロールが十分にできているからです。
しかし、年齢が上がり、前頭葉が萎縮するにつれ、感情のコントロールは利きづらくなっていきます。「自分はまだそんな年じゃない」とか、「自分はあんなモンスター老人になるはずがない」とこの時点で思っている人も注意が必要です。現シルバーモンスターたちも、中年の頃は、「あんな年寄りは嫌だ」と思っていたはずだからです。
モンスターほどの爆発はしないまでも、人の行動についてイラついたり、我慢しづらくなっていることが増えてきているとしたら、前頭葉が喜ぶ刺激ある生活で、思考の柔軟性をアップさせるように心がけてください。前頭葉対策は、感情の老化・劣化が始まる前から取り組まないと効果が半減します。







