食と寿命の関係性は
ミジンコでも見いだせる?
『「腹八分目」の生物学――健康長寿の食とはなにか』小幡史明 岩波書店
それなら、もっと寿命が短い動物を使えばよいのではという発想が出てくる。また、小さければ飼育場所もとらないし、餌代も安い。ラットより小さいのはマウスである。もっと小さいもの……いっそ、ミジンコでもよいのでは!?
1937年、ミジンコの食餌を制限したら寿命が延びた、という衝撃の論文を発表したのはレスター・イングルである。マッケイがラットの論文を発表したのが1935年なので、わずか2年後ではあるが、ミジンコの寿命はわずか1カ月であるから、2年もあれば研究するには十分である。
イングルは、通常の飼育条件のミジンコが平均29.9日生きていたのに対し、(通常の培地を薄めて)食餌を制限したミジンコでは平均41.4日生存したと報告した。つまり平均寿命が4割延長したということである。4割というとそれほど大きくない数字のように感じるが、ヒトの現在の平均寿命80歳が、110歳を超えるということになると思うと、その効果の大きさが実感できる。
ミジンコは微小な甲殻類であり、その餌は植物プランクトンである。ミジンコは水中にすむ生物であるから、ラットとミジンコでは文字通り、住む世界が違う。にもかかわらず、この2つの生物で、食と寿命の関係が同一であるとは全く驚きである。こうなると、「どんな生き物でもいけるんじゃないか」と思えてくる。







