そもそも長生きをする
メリットはあるのか?

 肉食動物かどうかにかかわらず、生存競争に勝つには、もりもり食べて、より早く大きく成長し、たくさんの子どもを残す方が有利だ。ある個体にそのような突然変異が生じると、その遺伝子は次世代に引き継がれる可能性が上がり、どんどんその傾向が強くなる。こうして、成長能力、生殖能力が高い生物がより繁栄するという進化的淘汰圧がかかる。

 このような進化の観点で生物を見た時、寿命の長さというのはどうだろうか。自然界では、寿命が長いことによるメリットはそれほど大きくない。一般に、次世代をたくさんつくるのは若い時であるから、いったん次世代に遺伝子を継承してしまうと、その後どのくらい健康に生きられるかはそれほど重要ではない。

 その点、人間社会は特殊で、生殖年齢を過ぎても知恵を蓄積させ仕事をすることで、その集団にとっても重要な役割をになう。しかし生物学的・進化的な観点では、そのような淘汰圧は理論上かからない。その意味で、寿命が長くなるような突然変異は、集団の中で蓄積しにくいのである。