一方で、日本国内で大騒ぎしている人たちよ。「戦争は嫌だ」「近隣と仲良くしたい」という主張は理解できる。誰でもそうである。多くの中国人もそうだ。だが、同時に台湾海峡は、日本の輸送にとって大事なシーレーンであることも理解していただきたい。今のように、ことあるごとに、制裁だの、禁止だの、中止だのを主張する中国が、本当に台湾を占領してしまい、台湾海峡を日本の船が通れなくなったらどうなるだろうか?

 筆者は高市氏の支持者ではないし、シーレーンの重要性を説く前に簡単に「存続危機事態になりうる」と口にしてしまう彼女の主張に同調するつもりはまったくない。

 だが、日本人は絵空事のような平和や自己満足的な友好を振り回す前に、自身が置かれた位置をきちんと、客観的に理解して判断すべきではないか。

 中国はすでに香港を呑み込んだ。前回の記事で伝えたように、香港の選挙は今や、かつて合法的に政府を民主的に変えていこうとした香港人たちの口を塞ぐことから始められている。中国はすでにはっきりと、「次は台湾」という目標を口にして憚らない。

 加えて、日本人にとって人気の観光地であり、親日だと言われることが多い台湾を、こうやってことあるごとに牙を剥き、異を排し、相手を追い詰めるような態度をとる中国政府に統治させて良いのか。

 振り返ってみると、少なくとも過去20年間、つまり21世紀に入ってから、日中関係には蜜月期などなかった。50年以上も前の、国交回復時の蜜月を、中国と日本の基調だと思い込むのはいい加減にやめるべきだ。

 今こそもっと現実に即した中国理解を、そして東アジア理解を、この機を利用して進めていくべきであろう。