ステファニーを例にとりましょう。彼女は普段、極めて気難しい人物です。協調性のスコアは低く、他人とも対立しがちです。友人や同僚、家族は、普段のステファニーのぶっきらぼうな態度に慣れています。それだけに、感謝祭での優しい振る舞いには、誰もが驚かされたのです。
しかし、家族がそのときに知らなかったことがあります。ベンチャー企業の経営を任されたステファニーは、感謝祭の後に、オーストラリアに赴任することになっていたのです。期間は3年。その間は、めったに帰省できなくなります。
彼女の娘は、そのとき妊娠6カ月でした。ステファニーは、家族と遠く離れたシドニーで仕事をしているあいだに初孫を迎えなくてはならなくなったことに、心を痛めていました。そして、物静かで思慮深い義理の息子や、その両親と感謝祭で会うことに、思いを巡らせました。これまで彼らには、気を遣わせてばかりでした。
しばし熟考した後、ステファニーは「感謝祭のあいだは、優しい母親になる」というパーソナル・プロジェクトを決意したのです。何も知らずにこの数日間の彼女の楽しそうな様子を見た人は、ステファニーは非常に協調性が高い人物だと考えるでしょう。
このように、普段とは違った行動を導くのが、「自由特性」なのです。
「愛」と「プロ意識」が
人の行動を変える
マーカスも、パーソナル・プロジェクトに取り組むことによって、自由特性に導かれた行動をとるようになりました。彼は遺伝的には内向型であるにもかかわらず、将来は音楽プロデューサーという職業に就きたいという情熱を持っていました。
この仕事は基本的には彼の嗜好に合っていました。なにしろ、好きな音楽なら何時間でも聴いていられたし、音楽を聴いているあいだは、誰とも話をしなくてもすむからです。
しかし、才能あるミュージシャンを発掘したり、インディーズのレコードを制作したりするためには、大勢の人を相手にした外向的な振る舞いが求められます。







