こうしてしばらく独りで過ごしたあと、彼は部屋を出て雪夜のモントリオール旧市街の路地裏を歩き、ライブハウスに入ります。そのとたん、いつものように陽気に話を始め、賑やかに過ごすのです。どのマーカスが、本当の彼なのでしょう?

優しい?怖い?
どっちが本当の彼女?

 ステファニーは、普段は怖い女性です。マンハッタンの出版業界で働く彼女のことを、同僚はタフで辛辣な、気むずかしい女性だと評します。彼女は自分でもそれを認め、誇りにすら思っています。

 しかし、彼女は普段とは正反対に振る舞うことがあります。たとえば感謝祭で家族と過ごす数日間、日頃とは打って変わって、とても優しく、気立てのよい女性になるのです。

 どのステファニーが、本当の彼女なのでしょう?

 ステファニーのパーソナリティは、社会的な側面から説明できます。幼い頃に家族がニューヨークに移住して以来、彼女はたとえ人からどう思われようとも、自己主張することが重要だという環境で育ちました。

 そして、ステファニーの場合は、生物学的にも協調性が低いと考えられます。この生得的な特性は、社会的な環境によってさらに強化されたのでしょう。それだけに、感謝祭のときに彼女が家族に見せる優しい態度は、意外なものだと言えます。

 マーカスのパーソナリティも、社会的動機によってある程度説明できます。マーカスは生後3カ月のときに、騒々しく外向的なフランス系カナダ人の大家族に養子にとられました。このために、生物学的には内向型のマーカスは、外向型と内向型のパーソナリティの両方を自分の中に取り入れる方法を見つけなければならなかったのです。

人間の多面性を表す
「自由特性」という行動パターン

 これらの疑問に答えるために理解しなければならないのが、個人的動機によって変化するパーソナリティの一面である「自由特性」です。

 パーソナル・プロジェクトとは、私たちが日常生活で取り組んでいるさまざまなプロジェクトのことで、木曜の朝に犬の散歩をするといった些細なものから、人生最大の夢といったものまで実に多様です。