「5ドアなんかジムニーじゃない」という声は？
F：APIOに来るようなマニアの方には、「5ドアなんかジムニーじゃない」と憤慨する人もおられませんか？
河：お客さんの反応はおしなべて良いですね。否定的な声は聞いたことがない。……いや、一人いたかな。でもその人も「否定的」というよりも「興味がない」という感じでしたね。ご自身の生活環境が、3ドアで十分、後部座席は使わないよ、という人なので。自分の暮らしの中で、特に5ドアの必要性を感じない人は、やっぱり「別に」という受け止め方になるのでしょうね。
でもファミリー層は違います。「待ってました！」という人ばかりです。そういえばその中の一部に、「5枚ドアは良いけれど、なんで5人乗りじゃないんだよ」という声はありますね。
ノマドは5枚ドアになってトレッド（左右タイヤの中心間の距離）も広がっているとはいえ、実際のボディの幅は軽のジムニーと一緒です。左右に張り出したオーバーフェンダーで、車幅は大きく広がっているけれども、室内幅は変わりません。だから後部座席は2人がけ。それを残念がる人は結構多い。
F：なるほど。せっかく5枚ドアにするならば、なぜ5人乗りにしなかったんだ、と。
「ワゴンR」をワイド化した「ワゴンRワイド」という車があった
河：スズキの「ワゴンR」というクルマがあるでしょう。それをベースにして、ボディシェルを拡大してワイド化を図った、名前もそのものズバリの「ワゴンRワイド」というクルマがあったんです。確か1997年に出たクルマだから、今から28年も前の話です。
ワゴンRとほぼ同じ顔で、軽のワゴンRよりはもちろん室内が広くて5人乗りだったけれども、当時人気が出始めていたミニバンやSUVと比べると、どうしても居住性や積載性に劣っていた。だったら軽でいいじゃない、と人気はイマイチだった。その時の苦い経験の記憶があるのかどうか、スズキはそれ以来、単純にワイド化させるというクルマ造りをしなくなりましたね。もっともそのワゴンRワイドは、後にソリオに進化して大人気になるのですが。
F：ソリオの先祖はワゴンRワイド……知りませんでした。
河：ただ、多くの人は大歓迎。今までは「ジムニーは欲しいけど3枚ドアだから……」と二の足を踏んでいた層がワッと飛びついたから、今回の5万台騒ぎになったわけです。あとは、林業とか電力とかのプロユースからも歓迎されていますね。やっぱり、キッチリ後ろに乗れて荷物がしっかり載せられるというのはとても大きい。
F：家族を乗せたいファミリーユースに、人員と荷物を載せたいプロユース。なるほど。
河：あとは大型犬を飼っている愛犬家の人。これも多い。夫婦で前に乗って、後ろにワンコを乗せるんだけど、3枚ドアで前席を倒して「さあ乗りなさい」とやっても嫌がって乗ろうとしないんですって。ワンコも狭いところに押し込められるのがイヤなんですね（笑）。ウチでも大型犬を飼っているお客さんが何人かノマドを買われましたよ。
5ドアになり、後部座席が広くなったジムニーノマド Photo by A.T.
