そもそもこのクルマの企画がスタートした時点では、「プレリュード」の名前は出ていませんでした。企画開始のタイミングとしては、社長の三部（みべ）が「ホンダとして、操る喜びをお客様に提供し続ける」ということを改めて強く打ち出した時期と重なっています。ホンダはずっと“提案型の商品”をやってきました。しかし「S660」を最後に、そういうクルマが途絶えつつあった。
2015年に発売された、軽自動車のオープン2シーターカー「S660」。2022年3月に終了した（広報写真）
今のホンダは「軽とミニバンの会社」と思われている
F：「ホンダらしさ」を見事に体現していたS660、1代限りでやめちゃいましたものね。あれは本当に残念でした。同じ時期にスーパーカーのNSXもやめてしまった。
誠に失礼ながら、「ホンダは軽とミニバンの会社」と言われても仕方がない状態が続いています。「それじゃあなた、NSXを出したら買うんですか？」という話なんですが……買わない、あるいは買えない外野が文句ばかりを言っている面もあると思いますが。私も含めて。でも、事実ではありますよね。
山：たしかにホンダは今、世間から「軽とミニバンの会社」と思われていますが、それだけでいいのか、と。「ホンダらしくない」と言われてしまっている自覚は、我々も持っています。フェルさんの言うとおり、S660もそうだし、NSXもそう。古くはS2000のようなクルマも含めて、あの手のスポーツカーが途絶えて久しい。そりゃあ、やりたいですよ。僕らだってやりたい。
でも一方で、未来を見れば、本格的なカーボンニュートラルの時代に向けて電動化社会にシフトしていく。この流れはもう止めようがない。このクルマは、「本格電動化の入り口」のタイミングで企画がスタートしているんです。
