「本格的な電動化に向けた先駆けとなる商品」として企画スタート

F:そういえばホンダの三部社長は、何年か前に「2040年までにエンジン車全廃」を掲げましたものね。全てのホンダ車を、EVとFCV(燃料電池車)にすると。市場環境の激変で、後に軌道修正することになりましたが。

山:そうですね。三部からの発信としても、ホンダは電動化に舵を切ると明確に言いました。社内的にはその発信に向けて準備を進めていました。とはいえ、明日からいきなり全部EVというわけにはいきません。そこで「本格的な電動化に向けた“先駆け”となる商品が必要だ」となったんです。ホンダはハイブリッド技術を持っているので、それを生かして「とにかく早く出していこう」、と。世の中の期待に応えるという意味でも。

F:「世の中の期待」とは、どういう意味ですか。

山上:ホンダが “提案型の商品”を出すことです。世の中はホンダに対して「こんなのどうですか?楽しいですよ。便利ですよ」という、提案型の商品を期待していると思っています。そして「でもここしばらくはそれが出ていないよね」という声がある。

 ホンダというブランドに対しても「チャレンジングスピリットが最近落ちている」と言われている。自分で言うのもアレですが、そういう見方をされているのは実感としてあります。むしろウチより何倍も大きいトヨタさんが、社長自らが旗を振って、いろいろチャレンジしているように見える。当然「ホンダはこのままで良いのか」という話になる。そんないろいろな要素が重なったタイミングが、まさにこの商品の企画が始まった時期だったんです。

企画スタート時に「プレリュード」の名前はなかった

F:驚きました。「プレリュードを復活させるぞ」から始まった企画ではなかったんですね。それを聞けただけでも、今日来た甲斐がありました。

本田技研工業 四輪開発本部 完成車開発統括部 LPL室 LPL チーフエンジニア 山上智行さん本田技研工業 四輪開発本部 完成車開発統括部 LPL室 LPL チーフエンジニア 山上智行さん Photo by A.T.

山:繰り返しますが、スタート時点では「プレリュード」という名前は出ていませんでした。「ハイブリッドでホンダのスポーツをもう一回やろう」というところから始まっています。