そうして少しずつスペースの需要と供給が揃うように形を変えていく存在こそが都市だと言ってよいのかもしれない。特に東京のように発展目覚ましい都市では、数年前の風景が一変することも珍しくはない。
そう考えると、大名屋敷の例のような歴史の残滓は、なぜ東京の激動を生き抜いたのだろう、と不思議な気持ちになる。その背後には、どういう経済学的メカニズムが働いているのだろうか。
またそれが土地の有効利用や都市の発展という観点から、どう評価されるのだろうか。
土地の区画面積は
広ければいいとは限らなかった
まず大名屋敷のような広い土地区画がもたらす意味を考えるために、区画の大きさの役割を考えよう。
土地の区画面積は、そこに建つ建物の大きさや土地利用の仕方を決めうるという意味で、重要な土地の特性である。
例えば区画が小さすぎれば、建設に多くの敷地面積を必要とする高層ビルの建設は難しいだろうし、逆に区画が大きすぎれば、敷地内部の複数のビルの間に私道を設ける必要が出てくるなどして、整備に余計な費用がかかってしまう。
そう考えると、土地には、単位面積当たりの価値を最大化するという意味での最適な区画のサイズがあるはずである。またその最適なサイズは環境によって変化しうるものだろう。
例えば、高層建築が不可能だった時代に、それを可能にするような建設技術の進展や規制緩和が起きれば、広い敷地のメリットが生まれるため、最適な区画サイズは大きくなる可能性が高い。
そうなってくると、区画の大きさは時代などに応じてなるべく最適なものに都度調整されるはずであるが、ここで登場するのが取引費用という概念である。
取引費用とは、市場での取引の際に交渉などにかかる追加的な費用のことである。
実際には色々な形で取引費用が生じうるが、例えば開発業者が土地を大きくしようと思い土地の集約を行う際、複数の地主との交渉が必要で、たまたま特定の地主が特殊な事情で売るのを渋れば、簡単に交渉は長期化してしまう。







