土地を高値で売り抜けるために地主が交渉を長期化させて、すでに売却に了承済みの他の地主よりも有利な立場で業者と交渉しようとすることも考えられる(専門的にはホールドアウト問題と呼ばれている)。
また土地を分割しようと思っても、都合よく複数の買い手がすぐに現れるとも限らず、その上複数人との取引はそれだけで面倒なことであるから、簡単には分割を決断できないだろう。
こうしたことから、区画サイズ変更の取引費用が生まれ、変更は容易ではないかもしれないのだ。
150年前からさかのぼって
地価の変遷を確かめてみた
区画変更の取引費用は都市にどう影響するだろうか。まず取引費用が大きければ、過去の土地の区画は時間が経過しても永続的に引き継がれ、時代や環境に応じた土地利用が難しくなってしまう。
そして、例えば大小2つの土地があったときに、どちらがより面積当たりの価値が高くなるかは、時代に応じて変わるかもしれない。先に論じたように、建設技術に応じて最も価値の出やすい区画サイズは変わると考えられるからだ。
土地市場に関する研究は数多あるが、まずは土地の大きさに関する研究として、筆者の研究であるYamasaki et al.(2023)(注1)を紹介しよう。
この研究では、大きな土地が突然都市に供給された際、長期的にその土地がどう変化していくのかを分析すべく、明治維新の大名屋敷地の接収と民間土地市場への流出をケースとして分析している。
かつて大名屋敷だったが故に大きな区画を持っていた土地が、市場の圧力にさらされる中で、その後そのサイズや価値をどう変化させたのか調べようということである。
またそのために、江戸期の大名屋敷の分布を示す切絵図や、明治期から現代に至るまでの土地の価格を示す地籍図、土地の価値を示す地価のデータを電子化するなど、150年にわたる土地の歴史を分析できるデータセットをおよそ3年をかけて組み上げた(大名屋敷の分布については図1参照)。
同書より転載
(注1)Yamasaki, Junichi, Kentaro Nakajima, and Kensuke Teshima(2023)“From Samurai to Skyscrapers:How Transaction Costs Shape Tokyo,” TDB-CAREE Discussion Paper Series E-2020-02.







