土地の取引費用が莫大な都市部は
大区画が手付かずのままになりがち

 区画の永続性に関しては、都市以外の郊外などの地域を使った研究の蓄積がある(Bleakley and Ferrie,2014;Smith,2020;Finley et al.,2021)(注2)。それらによると、しばらくは初期の区画サイズの差は維持されるが、150年ほどすれば消えるとする報告が多い。

 しかしながら、開発の利益がより高いであろう都市では取引費用はさほど重要ではなく、それほど長い永続性が見られないかもしれない。また逆に都市の方が取引費用が高いのであれば、非都市部より長い永続性が見られるかもしれない。

 そこで分析対象地域を100m四方の正方形に分割して集計し分析を行ったところ、旧大名屋敷地は、前述したような公園や大学などの公的利用された土地の影響を除いても、2010年代になっても依然として相対的に大きな区画を維持していることがわかった。

 また、地形等の影響を取り除くために、大名屋敷街だった丸の内と町人地だった八重洲という、地形の意味で似た隣り合う地域を比較して分析を行っても、同じ結果を得た(これは空間的回帰不連続デザインと呼ばれる手法である)。

 これは都市における取引費用が、都市以外の地域よりもずっと高く、土地の最適な区画利用を妨げていることを示唆する。また、こうした永続性は都心ほど強いこともわかった。

 都心ほど開発の圧力が高いのにもかかわらず昔の痕跡が残るということは、それだけ都心での取引費用が高いことを意味している。

ビルの高層化によって
大きな土地の地価が急上昇

 さて、区画の大きさの差は150年経っても残ることがわかったが、その地価に対する影響はどうだろうか。

 まず2010年代のデータを使って分析をしたところ、旧大名屋敷地の多い土地はその他の土地に比べ、高層ビルが多く、土地面積当たりの地価が高いことがわかった。

(注2)Bleakley, Hoyt and Joseph Ferrie(2014)“Land Openings on the Georgia Frontier and the Coase Theorem in the Short-and Long-Run,” mimeo. Smith, Cory(2020)“Land Concentration and Long-Run Development in the FrontierUnited States,”mimeo. Finley, Theresa, Rapha¨el Franck, and Noel D. Johnson(2021)“The Effects of Land Redistribution:Evidence from the French Revolution,” Journal of Law and Economics, 64, 35.