事業が全国展開になるにしたがい、対面ではなく電話とFAXでの身分証明書の確認、銀行振込が増えていく。部下たちは売上が欲しくて暴走し始めた。相手に知らせずに振込をして、借金の取り立てをしだしたのだ。「押し売り」ならぬ「押し貸し」だ。

 うまくいっていた闇金組織の旗色が悪くなってきた。

 最初は末端の人間が警察に捕まった。最終的には警察が本気になり、幹部クラスが組織犯罪処罰法、マネーロンダリングの疑いで指名手配される。

 しだいに自首する者、身柄を確保される者が出た。組織はバラバラになり、幹部も末端も全員が逃げ出した。

 よし彦も、逃げることになった。逃亡先は沖縄だった。この事件には時効があることを知った。

「僕が最後に闇金の貸し手として名義を使った日から7年間捕まらなければ時効が成立します。事件後、7年以上経ったとき『闇金事件の組織にいた者です。指名手配されているかもしれません。どうなっていますか?』と自分から警察に電話をしました。さんざん担当をたらい回しされた挙げ句、『指名手配になっていません。解除されているので大丈夫です。ちゃんと生きなさい』と回答がありました」

 よし彦は32歳になっていた。