ディー・エヌ・エー(DeNA)が10年もの間抱えている課題が、ゲーム事業依存からの脱却だ。それを象徴するのが社長人事である。現在の社長兼CEO(最高経営責任者)は、横浜スタジアム社長や横浜DeNAベイスターズ社長を歴任した岡村信悟氏だ。そしてDeNA が、スポーツ事業以上に高い利益目標を掲げているのがヘルスケア・メディカル事業である。特集『DeNA医療データ乱用』(全6回)の#5では、自治体医療データの目的外利用が、二重の意味で社長人事に影響を及ぼす理由を解説する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
大ばくちを打ったヘルスケア事業
目的外利用の影響は社長人事にも
ディー・エヌ・エー(DeNA)が10年来取り組んできた課題。それが、ゲーム事業依存からの脱却だ。
「Mobage(モバゲー)」が全体の業績を支えていた2013年3月期は売上高2024億円、営業利益768億円に達した。
しかし、この時をピークに業績は低迷している。直近の24年3月期第3四半期は約276億円もの減損損失を計上。ゲーム事業にかつての勢いはなく、同期までの累計の利益は、ライブストリーミング事業を合わせても6.2億円にとどまる。
スポーツ事業は同44億円と一見好調に見えるものの、例年第3四半期と第4四半期のオフシーズンに赤字で調整するため、利益の柱とは言い難い。
つまりDeNAは、この10年で開拓した事業がどれも利益の柱となり得ず、肝心のゲーム事業も衰退するという状態なのだ。
そのさなか、勝負に打って出たのがヘルスケア・メディカル事業だ。25年3月期に同事業の利益を50億円水準とする高い目標を堅持している。
ヘルスケアへの本気度は大型投資からうかがえる。22年には医療系のデータホライゾンとアルムを子会社化し、アルムの買収金額は約291億円に上った。
このようにヘルスケアに社運を懸けていた矢先の出来事が、本特集で報じている自治体医療データの目的外利用(#1『【スクープ】DeNAが医療データの「第三者への有償提供」を提供自治体に認める!目的外利用で個人情報保護法違反か』の通り、DeNAが自治体から預かった個人情報を基に作成した匿名加工情報を、委託契約書の業務を逸脱して製薬会社などに販売していること)だ。
データ利活用事業を巡る問題は、次期社長レースにも影響が及ぶ。次ページでは、DeNAの歴代社長や会長、取締役の顔触れを振り返る。すると、5年前を起点に、トップ人事に二つの新しい傾向が生まれたことが分かる。そこから浮上する次期社長候補の実名は。さらに自治体データの目的外利用によって、全てが白紙に戻る様子を解き明かす。