陰謀論にのめり込む人々
その共通点とは
コロナ禍以後、「闇の世界政府(ディープ・ステート)がパンデミックやワクチンを駆使して人口削減を図っている」という類の陰謀論が各地で猛威を振るうようになったが、雇用の不安定化や生活不安、孤独感といった事柄によって、これまで自分を支えてきた「世界観」が危機に見舞われた人々にとって、容易に尊厳を取り戻す機能をもたらしたこともまた事実であった。
筆者は、モリソンの父親のように陰謀論によって活性化した人々を間近で見てきた。
コロナ禍でYouTubeなどのレコメンド機能を通じて変貌していった友人や知人だけでなく、反ワクチン運動に参加した人々から直接話を聞いたり、あるいは陰謀論にハマった親族についてマスメディアの記者から助言を求められることもあった。
彼らに共通するのは、新たな「世界観」の獲得による欠乏の埋め合わせである。定年退職後の役割と居場所の不在や、経営者としての評価の不足といった尊厳に関わる問題を、自ら発見した重要なミッションとそれに対する決意や責任の感覚によって乗り越えるのである。
人々の尊厳を支えていた社会関係資本が崩壊し、流動的で場当たり的な境遇を強いられ、承認のカオスに翻弄される寄る辺ない世界において、それは自尊心を手早く回復する特効薬なのである。
日本におけるQアノンコミュニティの草分け的なグループを取材していた大手日刊紙の記者は、コロナ禍で孤独と不安にさいなまれた人々にとって、そのグループが「完全に居場所になっていた」と述懐した。
「新しい友達ができ、みんな褒めてくれる。そして『光の戦士』という使命まで与えてくれる。みんなすごくやりがいを持って活動しており、楽しそうだった」ことが強く印象に残ったという。
『THE LONELY CENTURY――なぜ私たちは「孤独」なのか』(藤原朝子訳、ダイヤモンド社)で、経済学者のノリーナ・ハーツは、孤独の定義を単に他者とのコミュニケーションの質だけではなく、内面的な状態や、社会的・政治的に疎外されている感覚も含まれるとし、世界各地でポピュリズム政党が躍進する一因になっていると述べた。







