ただ、その中でも例えば鷗友学園女子は4教科とも同じ方向を向いていると感じます。論理的思考能力とか、文章による表現力を重んじるって意味ですが、それはなぜかというと、あの学校は元々、4科の総合型だったんですね。

 昔の鷗友は2科の国算だけの学校でしたが、1991年に変えたんです。そのきっかけになったのが東西冷戦の終結。すごく壮大な話になるんですけど、それを実行したのが今の芝国際の校長である鷗友の元校長の吉野明さんをはじめとする先生方です。

 吉野先生は「東西冷戦が終わった今、もう答えはイエスかノーかではない。西か東か?ではない時代になったのだ。であるならば、二者択一ではない答えを求めるような教育をしなければならない」とおっしゃって、そのときから「思考力」という言葉を使っているんですね。

 もっとも当時は4科目の学校じゃなかったんですが、鷗友はやらなくてはいけないという理由で総合型で始めて、そこから4科目に派生していったという経緯があります。それゆえ、今でも、どの教科であっても記述が多いし、思考させる問題が多い。

 対照的なのが、海城です。国語を作問されている先生が「学校の出題方針はありますが、自分は学校の教育方針などは一切考えないで出題します」とおっしゃる。教育方針に則って出題しようとすると、純粋な思考力というものが問えなくなる。そこには文章と受験生しかいないという状況で、子どもたちの力を見たいと話されたんですね。能力を純粋に見たいから、解答もしっかり見る。読める・書けるという子がしっかり評価されないと良くないとおっしゃった。

 これは国語だけの話ですが、海城は社会も相当、面白いです。私が海城の中で一番好きな問題があるんですよ(実際の問題は記事末に掲載)。

「イギリスの料理はなぜ美味しくないのか?」がテーマで 設問も10個くらいしかないんです。

 これはもう入試問題というより授業なんですよ。「では、なぜフランス料理は世界一と言われるのか?」とそういうことを説明しながら、最後に問います。「イギリスの料理はなぜ美味しくないのか?」と。これだけ体系立てられた入試問題を見てしまうと、もうやられてしまうというか、海城が大好きになりますね。