普通、学校は偶然に“気付いた子”が完全に有利になってしまうような問題を入試に出題しません。というか、できないものです。必ず「これだと漢字の実力を測ることができない!」という反対意見が出そうじゃないですか。その辺りの事情を、私は鎌倉学園の先生に聞いたんですよ。反対意見は出なかったのか、と。そしたら、こう返されました。
「そんなことを言う先生はウチにはいませんよ。子どもたちはどの子も本校に入りたいと思って、もっと言えば本校でなくても、それぞれの志望校に合格したいと思って何年も頑張ってきたんですから。最終問題で解答用紙に『志望校合格』って書いたら気持ちいいじゃないですか?それだけです」
これを聞いて「ああ、本当に鎌学らしいなぁ……」って思いました。
――この問題は鎌学の雰囲気そのものに感じますが、それが入試問題にも出るものなんですね。
本当に作問担当の先生って、1年中入試問題のことを考えているんですよ。お風呂に入っていても、お湯が入る量と流れる量はニュートン算みたいな、本屋さんに行けば、入試問題に出題できそうな本を探してしまうという職業病を持ってらっしゃる(笑)。
当たり前の問題を出すと、みんなが正答してしまうから差が付かない。けれども、その子がそのときたまたま解けたというよりも、持っている力をきちんと発揮してほしいと願っているんですね。そのために目新しいというか、その場で思考させる問題を出そうと本当に考えておられる。これは作問担当の先生は全員同じです。
学校の先生は「こんなに苦労して作ってます」なんて言えないじゃないですか。私はそれを使って仕事にさせてもらっているので、先生方の代わりに声を大にして言いたいんです。
先生方は入試問題を大変な思いをして作ってるんですよ、倒してほしいと思ってるんじゃなく、この問題を解いて入ってほしいと願って作ってるんですよ、決して“ラスボス”ではないんですよって伝えたいです。
――次回は、中学受験の過去問出版社が教える「過去問の賢い使い方」をお届けします。







