最近の傾向は概念だけではなく、「それがあなたの生活にどう取り入れられていますか?」までを考えさせているわけです。市川中学の2024年の2回目入試の社会の問題では、男女雇用機会均等法について、実際の『求人票』をもとに出題されています。

 この問題は昔だったら「男女雇用機会均等法」と答えさせます。しかし、今は「男女雇用機会均等法というのはこういうものです。では、実際の求人票を見ながら、法律で求められている理念とは異なる、女性に対する間接差別に当たるものは何ですか」ということを問うているんです。差別には直接的な差別のほかにも間接的差別があることを考えさせるのは面白いと思いませんか。

 要は、学校の先生も子どもたちが机でただ暗記すればいいとは思っておらず、その知識がどういうふうに社会に反映されているのかということも考えてほしいと願っているんですね。子どもたちに、今勉強していることは現代社会と直結しているんだよ、ということは感じてほしいのだと思います。

――いつくらいから、こういう出題がなされるようになりましたか?

 15年くらい前までは知識偏重だったと思います。以前は大手塾が監修したような優れた教材が重宝されていました。とにかくテキストに載っていることをちゃんと勉強できれば、ある程度の難関校でも合格点を取れたからです。

 しかし、最近の子は真面目だから、ちゃんとやってくるんですよ。それゆえ一般的な問題を1問1答形式で出すと、全員が解けてしまう。そうなると差をつけるためにドンドン難しい問題を出すしかなくなってしまったのです。

  例えば、地中海性気候であるタシュケント(ウズベキスタンの首都)の雨温図と他の地域の雨温図を比べるとか。タシュケントは馴染みがある子のほうが少ないとは思いますが、ほかにも「静岡県を通る新幹線の駅を西から順に並べなさい」という問題もあって、社会科に顕著ですが、少し前の時代までは点差を付けるために難問にせざるを得なかったということがありました。