日本の「良さ」をどう生かすか?
海外の知財トップとの違い
――海外企業と比較して、日本企業の知財戦略が弱いと感じるのは、具体的にどんなところでしょうか。
長澤 まずは組織体制の違いです。欧米では知財のトップはCIPO(最高知的財産責任者)と呼ばれ、CEOやCTOと同じテーブルで議論するのが当たり前です。私がキヤノンの知財本部長時代に交渉した米国企業の相手は大抵EVPかSVP、日本でいう専務・常務クラスでした。しかし、日本企業の知財トップの多くはいまだに部長クラスです。中国でも30代の知財責任者がいきなりEVPになるケースがある。報酬は日本の知財トップとは2倍~10倍以上違います。そのため日本の知財担当者が海外企業にヘッドハンティングされるケースも多々あります。海外企業は当然、優秀な日本の知財人員で、日本企業の技術を知っている人が欲しいでしょうから。
もう一つ考えるべきことは、“三方よし”的な文化です。米国や中国の企業は、徹底的に知的財産の法的権利を主張するし、訴訟を辞さずに容赦なく責めると思います。しかし、日本企業はできれば「和解で穏便に」となりがちで、なかなか権利行使に踏み切れないし、裁判所も和解勧告が多いと感じます。それが日本の文化の美しいところでもありますし、交渉での解決は本来望ましいのですが、厳しい国際競争で勝つには果敢な権利行使も必要でしょう。米国から送られてくる契約書案でも、売買契約にサインしたら多くの知的財産権をライセンスしてしまうような条項が入った契約が散見されます。それらの条項を見極め退けられるくらいの知見は最低限必要です。
「日本の知財」が
国際競争力を上げるには
――国際競争力としての知財の重要性は高まっています。日本政府も、新たな枠組みとして「知的財産推進計画2025」を策定し、企業価値の源泉を有形資産から無形資産へと移す国家方針を示しました。長澤さんは内閣府の知的財産推進事務局の委員も務め、国の知財政策に関わってきました。「日本の知財」が国際競争力を向上させる上でのポイントはありますか。
長澤 諸外国と比べると、日本企業は人事的な慣習により、知財戦略の責任者が短期間で交替することも多いため、長期的な知財戦略を腰を据えて考えることが難しいという側面があるかもしれません。日本の特許庁長官も毎年のように替わりますし、企業の知財責任者を2年おきに替えるようなケースもあります。







