「言語化ブーム」が続くなか
有意義な議論のためのコツを知る
『新明解国語辞典』『大辞林』などを発行する三省堂は、2015年から毎年「辞書を編む人が選ぶ 今年の新語」を主宰している。
これは「その年を代表する言葉で、今後の辞書に見出しとして採録されてもおかしくないもの」を一般募集し、応募された言葉の中から、辞書を編む専門家がベスト10を選出するものだ。2025年は、「ビジュアル」の省略形で容姿や服装、髪型などの外見を表す「ビジュ」が大賞に選ばれた。
本記事で注目したいのは2024年の大賞「言語化」だ。かつては学術用語として使われていたが、日常語として多用されるようになったことから大賞に選ばれた。
2025年には「言語化ブーム」と言ってよいほど定着した感がある。言葉やコミュニケーションに関する書籍も多数出版され、ベストセラーも少なくない。その中から、米国で活躍するジャーナリストのチャールズ・デュヒッグ氏が著した『相手の本音を引き出す会話の正解』(早川書房)を紹介しよう。
この本の原題は「SUPERCOMMUNICATORS」、すなわち「会話の達人」だ。
スーパーコミュニケーターと呼べる人たちが、無意識に使っている、会話や議論を有意義に、かつスムーズに進めるための技法を、さまざまな理論や事例を引きながら解説している。
著者が指摘するのは、会話や議論は、大きく3つに分けられるということだ。
「何をどうするか」という現実的な意思決定、「どう感じるか」という感情にまつわる言葉のやりとり、「私たちは何者なのか」というアイデンティティーに関するものであり、スーパーコミュニケーターは、3種類のうち、どの会話が行われているかを察知し、それにふさわしい発話ができるのだという。
私たちの日常会話はもちろん、公的な場での話し合いでも、上記の3種類のうち1つだけが一貫して行われることは、まずない。たいていは3種類が混ぜこぜになっている。







