『相手の本音を引き出す会話の正解』(チャールズ・デュヒッグ著、渡会圭子訳、早川書房、税込2970円)
例えばAさんが意思決定の問いかけをしているのに、Bさんが感情にまつわる言葉で答えたりすることは、よくある。そうすると、話がかみ合わなくなりがちだ。
さらに著者は、有意義な議論をするためには「学習する会話」を心がけるべきだとしている。言葉を交わす中で、相手が世界をどのように見ているかを知ろうとするとともに、自分の見方を相手に理解してもらうように努める。
SNSなどネット上の言葉のやり取りに欠けているのは、この「学習する会話」ではないだろうか。「論破」などとはほど遠い態度といえるだろう。
銃規制賛成派と反対派の
議論で相互理解は可能か
本書では、具体的事例として、米国ワシントンDCで行われた「銃規制」賛成派と反対派による会話の試みが紹介されている。あえて「感情」にまつわる会話を織り交ぜながら「学習する会話」をするよう誘導し、有意義な議論ができるか、という「実験」だ。
その場の会話では、自らの主張や考え方を改めるまでには至らなかったが「なぜそういう主張をするのか」といった相互理解は進んだようだ。
ある銃所有擁護派は、ワシントンDCでの議論が終わった後も、反対派の一人と交流を続けている。「世界は複雑だ。それを理解するためには自分とは異なる友人が必要だ」という彼の言葉が印象的だ。
2026年、本書を、周りの人たちとより良いコミュニケーションをとるきっかけにしてみてほしい。







