話題沸騰だった暗号資産の課税見直し
結論から言うと「負担減」

 現状では暗号資産(仮想通過)で得た利益にかかる所得税は最大で55%でしたが、今回の税制改正大綱にて一律20%となり、負担減と言える結果となりました。株式などと同様に申告分離課税の対象とする予定で、2028年から開始見込みです。

 損益の税務当局への報告義務整備や投資家保護のための規制強化についても検討されています。

こどもNISA創設へ
税制の変更点とは

 少額投資非課税制度(以下、NISA)については、投資信託を定期的に積み立てる「つみたて投資枠」において未成年を対象とする「こどもNISA」の創設が決定しました。

 NISAでは18歳以上という年齢制限が設けられていましたが、こどもNISAでは撤廃され、0歳からでも可能となります。政府は親や祖父母がNISA口座を開き、進学資金などを積み立てていくことを想定しています。

 18歳未満が投資できる額は年間60万円、総額は600万円までと上限が設定される予定です。積み立てた分を引き出せるのは12歳以上としています。

意外な変更点は
食事支給に関わる所得税非課税限度額の引き上げ

 企業が従業員に支給している食事代補助も見直されました。1カ月当たりの非課税の上限額は、現行の3500円から7500円へと大幅に引き上げられます。

ハートランド税理士法人の大久保明信税理士おおくぼ・あきのぶ/ハートランド税理士法人 代表税理士。1986年生まれ、高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳でハートランド会計事務所(現・ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、25年には顧問先数1700件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。

 物価上昇への対応を踏まえたものですが、見直されるのは1984年以来と実に約40年ぶり。企業は福利厚生サービスを導入しやすくなるため、恩恵を受けられるサラリーマンも多くなるかもしれません。

今回の改正は
「手取りを増やす」ための抜本改革

 今回の改正は、まさに「手取りを増やす」ための抜本改革です。年収の壁が178万円へ引き上げられ、納税者の約8割が減税の恩恵を受けます。加えて、42年ぶりとなる食事手当の非課税枠倍増や住宅ローン減税の延長など、働く世代の家計を直接温める施策がめじろ押しです。

一方で、社会保険の適用拡大など「他の壁」の変化も予定されています。目先の減税効果を享受しつつ、iDeCoや新NISA、そして今回のこどもNISAなどを活用し、長期的な資産形成へつなげる好機と捉えましょう。