F:何割くらいが新しい部品ですか?

山:答えにくいことばかり聞きますね(笑)。まあ、リバースを掛けられればプロにはすぐにバレちゃうことなんでしょうが、半分以上というところでしょうか。これも先にお話したことの繰り返しになるのですが、放っておくと本当に1000万、2000万のクルマになってしまうので。

F:1000万円!安さが大事な軽自動車とか、どうやって造っているのだろう……。

山:いまの自動車のコストって、本当に上がっているんです。これは冗談でも誇張でもなく、本当にそうなんです。そこがまさにこのプレリュードの開発の難しかったところです。

 新しくつくり変えたら魅力は上がる。それは分かり切っている。ですが当然それに見合うだけの対価をいただかなければいけません。するとこんな値段になっちゃいますよと。この装備をつけたら、この機能を付けたら、そりゃお客様は喜ぶだろうけど。あれもこれもとやって、そこに付帯工事が生じて、開発期間にも収まらないと、投資も回収できなくなっちゃう。

F:せっかく良いクルマを造ったのに、損して売ることはできませんものね。

山:もちろんそうです。損はできない。だから今あるもので、使えるところは最大限に使ったんです。エンジンルームから床下はハイブリッドのシビックを持ってきて。そこにTYPE-Rのシャシーコンポーネントを付けて、デザインはまるっきり別モノ、と。ざっくりそんなイメージですね。

F:大変よく分かりました。長時間ありがとうございました。

一同:ありがとうございました!

インタビュー中の様子Photo by A.T.

 山上さんからお話を伺って強く印象に残ったのは「削ぎ落とす」という姿勢だった。派手な装備も、分かりやすい数字もない。だが実際にクルマに乗って走ってみると、削ぎ落としの美学がジワジワと伝わってくる。

 新生プレリュードは、速さを誇るためのクルマでも、昔を懐かしむための復刻版でもない。名前を受け継ぎ、思想をいまの時代に移し替えた、現代版のクーペである。

 急いで評価しようとすると、恐らく何もつかめない。
 時間をかけて付き合うほどに、静かに効いてくる。
 それがいまのプレリュードなのである。

 ということで、2025年の記事はこれにて終了です。それではみなさま、また来年!

(フェルディナント・ヤマグチ)

 こんにちは、AD高橋です。

 2025年も本連載をご愛読いただき、ありがとうございました。明日は「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」年末特別編をお送りします。

(AD高橋&編集ヨシオカ)