ホンダのLPLはどうやって決まる?

F:ところで、山上さん個人について聞かせていただけますか。山上さんはプレリュードのLPLですが、これはどうやって決まるんですか?「こういうクルマを造りたい!」って、自分で立候補するものなんですか?

山:「こういうクルマを造りたい」と漠然と思ってはいましたが、立候補ではありません。たまたまアサインしてもらった、というところです。どんな仕事でもそうだと思うのですが、やりたいことができるのって、本当に1パーセントぐらいの人しかいないので。

 もともとは、今売っているシビックの後半のLPLを担当していたんです。シビックの開発が終わったタイミングで、この話をいただきました。

F:エンジニアの人ならば、誰でもみんなLPLをやってみたいですよね。ひとつのクルマを責任持ってまとめるんですものね。

山:そりゃそうですよ。

F:山上さんがLPLをやるのは何台目ですか?

山:私はシビックの後半が初めてなので、これで2台目です。企画の最初から全部携わっていたのはプレリュードが初めてです。

F:もともとは何屋さんなのですか?

山:もともとはオトシン……振動騒音対策ですね。ロードノイズを静かにする仕事を長くやっていました。大学の専攻は機械で、燃焼を研究していました。

F:燃焼。すると本来なら、エンジン設計に配属されるべき経歴ですね。

山:その辺はあまりこだわりがありません。クルマであれば何でも良かったので(笑)。実は私、転職組なんですよ。ホンダに来る前はホッチキスの会社で働いていました。

F:ホ、ホッチキス……あのパチっと書類をとめる事務用品のホッチキス……ステープラー?……あの会社にいたんですか?

山:そうです。その会社は、大工さんが使う自動釘打ち機も造っていたんです。空気圧でプシュプシュッと釘を打つ、あの機械ですね。あれのおかげで、住宅建築現場の作業効率は劇的に向上したんです。単純に見えて結構奥の深い装置なんですよ。振動も凄いし音もすごい。あの作業を長年続けていると、大工さんが白蝋病になっちゃうんですよね。

F:白蝋病って、振動障害のことでしたっけ。木を切る仕事なんかで、チェーンソーの振動で指が白くなっちゃうやつ……。

山:そうです、それです。初期の頃の釘打ち機は、そういう問題があったんです。その振動対策をやっていました。6年くらい勤めたかな。