病原性に対する懸念の声も
一方で、放射線を食べるカビに対する懸念を示す研究者もいる。
ノサンチャク教授は「特にメラニンを持つ菌類は、国際宇宙ステーションやミール宇宙ステーション内でも確認されている。宇宙の放射線は菌類を死滅させるものではなく、むしろ成長源となる可能性がある。これらの宇宙菌類は、遺伝的な変異を含め、人間や地球上の他の種にとってより病原性の高い存在に進化している可能性がある」と懸念を示した。
「菌類は進化系統樹上で人間に非常に近い。そのため、人間の病原体として制御が困難であり、菌類にとって有害なものは、しばしば人間にとっても有害であるという難点がある。現在、菌類の研究は著しく不足している。WHOが2022年に発表した病原真菌優先病原体リストでも、(研究の遅れ故に菌類に起因する疾病への対策が遅れているため)菌類による疾病は世界的な重大脅威とされている。人類が(宇宙などの)新たな領域へと進出していく中で、この脅威は今後さらに増大するだろう」
菌類がどのように作用しているのか、内部にどのようなメカニズムが存在し、それが放射線をエネルギーに変換する能力や放射線を吸収する能力にどう関係しているのかを明らかにするための研究は、現在も続いている。
放射能物質で汚染された地でも生き延びる黒カビは人類にとって吉報となるのか、凶報となるのか。今後の研究が待たれる。
※当記事は「ニューズウィーク日本語版」からの転載記事です。元記事はこちら。








