買収先がソフトからハードへ拡大するワケ

 アルトマン氏の構想を早期に実現するため、SBGはハードウエア分野にも進出し始めた。象徴的な取り組みが、スイス重電大手ABBから産業用ロボット事業を買収したことだ。これまでの買収は英アームのようにソフトウエア分野がメインだったが、最近はハードウエア分野にも拡大している。

 オープンAIが開発する新しい推論モデルを実社会に導入し、AIが自律的に人間と協働する世界を実現する――アルトマン氏と孫氏のビジョンは一致している。SBGが、エヌビディア株を全売却したのは、株価の割高感が高まったことに加えてアルトマン氏をより強力に支援する資金の確保が目的だったはずだ。今後も保有株式を売却したり、資金を借り入れたりしてソフトとハードの両面からオープンAIとの協業を深めるだろう。

 問題は、それが本当にSBGの長期的な業績拡大につながるか否かだ。投資ビジネスと、ロボットなどのモノづくりは異なる。投資ビジネスの基本は、コストが低いところで資金を調達し、より高い収益率が見込める企業などに投融資することだ。

 対して、投資や買収を重ねただけでは、高付加価値のロボットなどAIデバイスが創出できるとは限らない。特に、米国では熟練の職人が枯渇している。人件費や土地の取得コストも高い。米国と中国の対立により、オープンAIなどが中国企業にロボットの製造を委託することも難しい。

 AIロボットの実用化に向けては、SBGと日本企業との連携の重要性が高まるだろう。実はアルトマン氏も、AIデバイス創出のため日本企業と連携する考えを持っているようだ。オープンAIがSBGとの資本関係を強化した狙いに、米国のソフトウエアと日本のハードウエアの新結合も秘められていそうだ。

 日本の素材、工作機械、制御装置、ロボット関連企業は国際的な競争力を有している。孫氏が国内企業と提携することも、AIデバイスの製造に関して、ひいては巨額投資を成功に導くピースの一つといえる。