ベネズエラへの武力介入を
正当化したアメリカの論理

 上述したように、ベネズエラに強く関与しているのは、反米国家の代表格である中国、ロシア、イランの3カ国である。トランプ政権はベネズエラとこの3カ国の関係を通常の外交関係とはみなさず、「西半球」への戦略的侵入であり、明確な挑戦だという認識している。

 今回のベネズエラへの武力介入で重要なのは、アメリカがその正当化に用いた論理構成である。

 アメリカ司法当局は、マドゥロ大統領本人およびその息子について、国際麻薬取引への関与を理由に起訴・告発を行ってきた。

 ここで問題とされたのは、マドゥロ大統領という独裁者が、国民に対して人権侵害をおこなったことではない。実際、トランプ大統領は「独裁であること」それ自体を理由に政権を攻撃したことはほとんどないのである。

 そのことはロシアのプーチン大統領に対して表立って批判することを避け、サウジアラビア皇太子のワシントン・ポスト紙記者殺害事件に言及せず、両国との関係強化に乗り出していることからも明白だろう。

 また、マドゥロ氏の後継者として、ノーベル平和賞を受賞した野党指導者のマリア・コリナ・マチャド氏ではなく、マドゥロ派の現副大統領を選んでおり、マドゥロ体制自体は維持している。これは、トランプ大統領が民主化によるベネズエラの体制変更ではなく、治安回復を望んでいるからだろう。

 今回のベネズエラ武力介入の論理は、国家中枢が犯罪組織と一体化していると判断されたことにある。国家が組織的に麻薬を生産・流通させ、他国の国民を害しているのであれば、それはもはや主権国家ではなく「犯罪組織に占拠された統治体」と認識されうるからだ。

 この認識に立てば、ベネズエラ問題は外交問題ではなく、アメリカ国内治安に直結する国家安全保障問題に格上げされる。

 トランプ政権の国家安全保障戦略のもう一つの特徴は、軍事・司法・制裁・法執行を一体の道具として扱う点にある。

 マドゥロ大統領らへの起訴は、マドゥロ政権がベネズエラにおける正統な統治主体ではないというメッセージを国際社会に発信するためである。

 この論理に立てば、今回のベネズエラ攻撃は、アメリカへの犯罪行為に加担している容疑者を拘束するための手段にすぎない。その容疑者こそマドゥロ大統領その人だった。